「ふふ、教えてあげる。
千聖の家はね、母子家庭なんだよ」

「は?そんなの私の家だって…」


「別に君の家庭の事情なんて知らないけどさ」


「……っ」


佐久間さんは、千聖をわかってなさすぎる。
イラついた俺は少し低い声を出した。


「昔から父親は身体が弱くて入退院を繰り返してたんだ。それが小学4年生のころ、手術ミスで死んだんだ」

「……」


「多額の口止め料も断って、母親は一生懸命働いたよ。弟もその頃から医者になりたがって、千聖はいつも我慢してた。
文化祭の賞金も全ては家計を支える為にって考えてただろうね」

「そんなの、聞いたことなかった」


「だろうね。だって千聖は本当に佐久間さんのこと好きだったから。
千聖は心配かけたくなかったんだよ。同じ母子家庭ならわかるでしょ?」


佐久間さんの家庭の事情はなんとなくしか知らないけど。