明日はアシタの風が吹く!【最終話】

「モカヒン……よく胸にしまっとけ。『明日はアシタの風が吹く!』」

組長は疲れ切った表情で俺の目を見つめ、力なく言った。

「モヤシ女の、最後の言葉だ」

さっ最期の……言葉…………

ゴクリとツバを飲み込むと、まるであの人の言葉がそのまま沁みてくるようで、泣きそうになる。

「そのモヒカンが風にちゃんとなびくように、しっかりセットし直せよ。明日は八時にここへ集合だ」

先代は首を垂れたまま部屋の外に出て行ってしまった。

俺たちはこれから、どうすればいいんだ?

日が暮れたら夜になるけど、途方に暮れたら絶望になるのかもしれない。

せめて……せめて卵さえ取り戻せていれば―――――

人類史上の宝なんて、そんなの、もうどうだっていい。

俺に取り戻せるのか? あの人の形見を………

乱闘が嘘のように静まりかえったほこり臭い部屋の中で、俺は自分に降り注ぐ絶望を背

中に受けながら夜明けを待った。


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ジィリリリリリリ

うるっせ~~~~~~~っ!!

なんだこの大合唱はぁっ!

金属的なけたたましい音がそこら中から鳴り響き、まるで被った鉄鍋をゴンゴンやられてるような気分になった。

でも、それは俺に朝を知らせてくれた。

時計を見たら七時半。

先代組長は三十分かけて支度を整えるらしい。

俺もトイレに行ってモヒカンを直すことにした。

『明日はアシタの風が吹く!』そして俺のモヒカンがそれに揺れる。

見ててくれよ? 俺は絶対に卵を取り戻すから!!

頭をセットしながら、あの人に誓い、部屋に戻ると先代がいた。

「モヤシ女さんとは会ったか?」

「いいえ、まだ。どこにいるか知らないし」

そんなに広い事務所じゃないんだから、探せばどこにいるかなんて、すぐ分かったはずだ。

でも俺は、あえてそれをしなかった。

できなかったんだ。