世の中には自分よりも不幸な人間が山のように居る。その逆で有り余るほどの大金を持ち、欲望を満たす為だけに家族や周りの人たちを傷つける人もたくさん居た。そして それもまたお金と言う道具で片付けてしまうのであろう。人間は不平等だ。神様は本当に存在するのだろうか…神に願い、祈り、求め、従い、信じて目に見えないものだからこそ 形のないものだからこそ いつまでも永遠に存在するのだろう。あたしは幸せなんだろうか。ふとそんな事を想った。今日は雨が降っていた。梅雨に入ったものの、ここの所、夏のような日差しが降り注ぐ日が続いて居た。ベットに寝転がりタクミの部屋の鍵を見つめる。なんの変哲もない、ごく普通で当たり前の鍵だ。残したメモには あたしの携帯番号を書いておいたし 電話が来たら鍵を持って行くつもりでいた。しかしタクミからの連絡はない。今日で2週間が経とうとしている。もしも、このまま連絡がなかったら…この鍵はどうするべきなんだろう。いきなり部屋に返しに行くのも・・・どうかなと思うし。ふと時計を見上げると20:38を指している。あたしはむくりと起き上がりクローゼットを開き ジーンズに淡いピンクのカットソーを着た。「ちょっとコンビニに行ってくるね」と母親に言い残し そのまま外に飛び出していたのだ。気がつけば、財布も携帯も持たずにタクミの部屋の鍵だけを持って出て来ていることに気がついた。小走りで急ぎ気味に歩く。気が変わらないうちに、急いで向かっている自分がいた。マンションの前に着き 部屋の明かりを確かめる。部屋には居る様子だった。このままポストに入れて帰ろうかとおもったが、勢いでエレベータのボタンを押した。さすがにドキドキしている。タクミに会うのは今日で2回目。なのに部屋に泊まり、鍵まで預かって居るのだから…。ドアの前に立ち大きく息を吸い込み、大きく吐きだし、人差し指に精一杯の力を込めてドアフォンの上にそっと置いた。そして一呼吸おいて強く押してみた。10秒ほど待っても返事はない。もう一度軽めに押してみるがやはりドアはピクリともうごくことはなかった。あたしはドアに付いてるポストに鍵をそっとおしこると、カタリと音がして その後 床に落ちてしまったのかチャリリンと少し大きな音がした。