愛してる、愛される。

朝日が眩しかった。窓から入り込む風が少し冷たくて布団を肩までかけて丸くなる。少しだけ頭が痛かった。昨日、何時まで飲んでいたんだろう…それからの記憶は切り取られたように見当たらなかった。
ほのかに香るコーヒーの香ばしい匂いとカチャカチャと食器が重なり合う音で ゆっくりと目を開けるとそこは見たこともない部屋で寝てるベットも布団も あたしのものではなかった。あわてて飛び起きてみると服は着たまま メイクもしたままの状態だで、上に羽織っていたストールが綺麗に折りたたまれ、ソファの上に置かれていた。
１５畳ほどの広めのワンルームでキッチンはきちんと仕切られていた。ゆっくりと 忍び足でキッチンの方へ向かうとタクミがいたのだ。
「おぉ！！びっくりした」
あたしに気付いたタクミは驚いてロールパンを落とした。
「あの〜あたし、なんでここにいるんでしょうか？」
ロールパンを拾いながらタクミはこう言った。

「熟睡してたから連れて来た」

あたしはシャワーを借り出ると、そこにはＴシャツが置いてあった。それを着てもいいものか悩んだあげくに借りる事にし、部屋に戻ると 部屋は物音ひとつしないで 静まり返っていた。
テーブルにはメモが残されていて、そこには『鍵は２個あるから帰る時は閉めていくように』と書いてありコーヒーとロールパンが置いてあった。パンのお皿のしたにもメモがはさんであり『さっき落ちたパンじゃないから』と書いてあった。
あたしは思わず吹き出してしまった。そして少し冷めたコーヒーを飲んで この不思議な状況のなかでパンを食べている自分にまた笑えたのだった。

あたしもメモを残し、食器を洗い、ベットを整え部屋を後にした。
外は快晴で少し暑いくらいだった。意外な事に タクミの家と あたしの家は歩いても１５分程しか離れていない場所にあったのだ。あたしは軽い足取りで帰ったのだった。