思えば あたしはいつの頃からか自分がどうゆう人間なのかがわからなくなっていた。
自分の中に いつも別の誰かがいて、こうした方がいい、ああした方がいい。みんなからこんな風に思われてて、こんな風に見られてる…
心と体は全く別のもののようだった。
本当はこうしたいのに 人の目を気にして諦めたり
本当に愛してるのに 何かしら理由を付けては その場から逃げ出して、大きな声で泣き叫んでみたり 悲しいのに悲しくないふりをしたりしていた。
何が本当で どれが嘘なのか、どんな想いで どれが真実なのか…何も解らなくなってしまった。

小さい頃の夢はお嫁さんだった。
真っ白なドレスで、きれいな花がたくさん飾ってある教会で 楽しそうに笑っている自分の想像ばかりが頭をよぎる。
ただそこまでなのだ。
そこに相手はいない。
何のしがらみもない。
苦しい現実には何一つ気付いていなかったのだ。
それは自分が子供だから許される事であって、その漠然とした想いだけで満足できていたころの自分が
なぜだかとても輝いてみえた。
そんな夢のカケラでさえ、目を輝かせ語り合っていた時が 真実で本心だったような気がしてならない。
もうあの頃の様には戻れないけれど その漠然とした夢が叶う日を あたしは密かに待っているのかもしれない。