涙を拭く後

 「なんで、私ばっか!!」

確か、私がそう母に怒鳴ったときだったと思います。

父が、突然涙を流して私に怒鳴ったんです。

  「父さんは・・・」

  

    「”父さんの余命はあと、1年 なんだよ!!」



「・・・は?なにいってんの・・ねぇママ?・・・」


母はうつむいて泣いていました。

「・・・知ってたの」

コクコクと母はうなずきました。

父は泣いていました。訴えかけるように私を見ていました。

「知ってて・・・言わなかったの」

母は、ただ泣いていました。

父は・・・「ごめん」

そう繰り返して泣いていました。

「そもそもさ・・・父さんは何のガンなの」

そうなんです。私は父が何のガンなのかも知らなかったんです。


誰に聞いても教えてもらえなかったんです。


「・・・胆管ガン。・・・肝臓ガンだ」

父は今まで聞いたことのないような静かな声で言いました。

「うん・・・」

「言わなかったんじゃない・・・言えなかった」

「うん・・・っ」

涙が出ました。現実が突きつけられたんです。

  ”父の死”を知ってしまったのです。



あとで、聞いた話なのですが、父は、余命を告げた医師と自ら握手を交わしたそうです。

  この話を母から聞いたとき、涙が溢れてきました。