その男の人の話は、30分もかかった。

 その男の人が話している間、適当に相づちをし、たまに、氷で薄まったアイスティーを、飲んだ。


「あ、でも、最後に他に好きな人がいるって、思わず、言ったかも。」


 げほ、げほっ。


「っ····、それ、一番だめだって。」

「大丈夫?」

「大丈夫。あなたが、最後に小さな爆発言うから、驚くじゃない。」


「ごめん。っていうかさ、こんな寒い日に、アイスティー?」

「だって、アイスは、ストローで飲めるから、両手つかわなくても、零れにくいから。」

「そっか。ところで、余真(よま)みきさん、俺のこと、まだ、わからない?」

「はぁ!わからな····、えっと、うん?失礼だけど、眼鏡、外してみて。」


その男の人は、眼鏡を外した。


見覚え·····。


 

「あ、以尾くん。」


 以尾くんは、みきのクラスメートだ。


「名字、知ってくれてたんだ。ありがとう。以尾周です。よろしくお願いします。」

「あ、よろしくお願いします。視力、良くないの?」

「良くないことはないよ。0.7ぐらいだから、眼鏡なくて見えるかな。でも、眼鏡男子って、今、女受けいいみたいだから、学校以外では、着けてる。学校で、着けたら、面倒なことになりそうで。」


 周は、外した眼鏡を、再び着けた。


「温かい飲み物、俺が飲ませよっか。」

「ひっ!大丈夫です。ここのお店、暖房よく効いてるし。」


 お店のマスターがみきの方をみたので、みきは、会釈をした。


「そっか。了解。」


 眼鏡をかけなくても、とりあえず、顔だけはイケてる異性に、顔を近づけられると、だめになりそうな予感が、みきを襲った。


「以尾くん、何故、そこで、笑いながら言うんですか。」

「ごめん、ごめん。でさ、他に好きな人がいるって、余真さんのことだから。」


 そう言って、雪の中、傘も差さず、周は、このお店から出た。


「いつになったら、この雪、積もらなくなるんだろう。」


 みきは、独り言つ。