みきは、窓の外、雪が積もっていく様を、観ている。


「いつまで積もるんだろう、この雪。私が、ここ出る前までに、やんでくれたらいいんだけど····。」


 みきは、独り言ちた。

 
「アイスティー、お替り。」


 しばらくして、手元に届いたアイスティーを飲みながら、きみは、読書の時間を楽しんだ。

 今は、文学女子になりきろう。


 







 突然、大きな物音がした。

 みきは、ストローから、指と口は、話さず、視線を本から、その物音がした方へ移した。

 その物音は、“物音”ではなく、“人声”だった。

 その声は、みきのいるブロックから、近かった。


「あんたとは、別れる。バイバイ。」


 赤いハイヒールを履いた女の人は、そういって席を、そのお店を、去った。

 別れ話か、嫌だな。

 みきは、静かにため息をついて、再び、視線を本に戻した。












「ねぇ、ねぇ、俺、さっき、失恋したんだよね。知ってるよね。」


 みきは、その声にたじろいだ。

 でも、次の瞬間、アイスティーを一口飲み、ストローから指と口を離し、視線と一緒に顔を本から離し、正面を向いた。

 その声を無視してもよかったが、無視する勇気は、みきには、なかった。


「知ってますけど····。あんな大声、誰でも気付きます。人の集中力を削ぐ声でしたから。あの女の人の声。」


 みきは、怪訝な表情をしながら、とりあえず、そう応えた。


「ごめんね。りんりん、あの女の人、どうして、あんなに怒ったんだろう?」

「あなたが、何か、怒らせる事でもしたんじゃないのですか。」

「怒らせる事、してないと思うんだけど。凜には····」


 その男の人は、女の人―凜との事を最初からみきに、話し始めた。

 みきは、この話しは、長くなりそうだなと重い、ひとまず、本にしおりを挟んだ。