幻~Summer~










おそるおそる顔をあげてみると


自分と同じくらいの年の男の子が立っていた。








「ううっ、… ひっく…」



『ちゃんと言ってくれねぇと分んねえよ…』




すると男の子は私がもっていたメモを取った。


「あっ…」


『ここに行きたいのか…?』


  




こくんと頷く



 


『おし、ついてこい』




立ちあがってついていこうとしたが、立てない…






すると男の子は一瞬考え込み、





私の前にしゃがんだ。















ぽかんとしてる私を見るなり



『乗れよ』



そう声を掛けてくれた。


男の首に腕を回すと



よいしょっと言うなり私をおんぶした。















少ししてから


「もう大丈夫だよ」と言って降りようとしたけれど。









『黙ってろ』




と言われたので







そのままおんぶされるかたちになった。












うっすらと赤い夕焼け空




蝉がなく声



どこか懐かしい匂い












男の子の背中から体温が伝わってきて



なんだかくすぐったかった