龍泉山の雪山猫

わたしの後ろでパタンと戸が閉まると、元気のいい笛と太鼓の音が鳴り始め、その音はだんだんと遠くなっていった。

「お、おわったー。」
わたしは力が抜けてそのまま床に座り込んでしまった。


拝殿の中は薄暗く、木の床が冷たい。普段はここは選ばれた村の男の人たちしか入れない、神聖な場所。その人たちが毎週掃除に来ているせいか、中はとてもきれいだった。
見渡しているうちに、祭囃子の音はすっかり聞こえなくなった。
わたしはゆっくり立ち上がり、拝殿から神殿につながる戸の方に歩いて行った。床がギシギシと音を立てる。重たい着物が更にどっと重く感じる。
これ、早く脱いで、楽な着物に着替えよ。

戸を開き、神殿の中に入ると、そこはいくつかの行灯で明るく照らされた、とてもきれいな部屋だった。床はきれいに磨かれていて、部屋の正面奥には緑色の龍の置物が置かれていた。部屋の中央には二人分の食事が用意されている。わたしは見回しながら打掛を脱ぎ、部屋の右端に置かれていた衣桁にかける。衣桁の前には二つの箱があり、一つは空で、もう一つには着物が三着ほど入っていた。

髪飾りを取り、帯を緩めると、体がだいぶ軽くなる。それと同時にお腹がなった。
緊張して朝ごはんちゃんと食べられなかったのと、帯がきつく締め付けられていたせいで、今になって急にお腹が空く。わたしは一つ一つの小物を丁寧に衣桁の前に置いてあった箱にしまい、もう一つの箱に入っていた軽い生地の着物を着る。髪を結いなおして、御膳の前に座ると、またお腹が鳴った。

きっと、村の人が朝早くに作ってくれたんだろう。いつもは食べられないようなご馳走が御膳の上に並んでいた。

「いただきます。」

わたしは手を合わせてから箸をとり、里芋の煮物を一つ食べる。

「おいしー!!」

がんばった甲斐があったなー。一生懸命になった後のご馳走は最高!
わたしはまだ少しだけ暖かいご飯をほおばり、お魚に箸をのばす。


「花婿を待たずに食事か。」

後ろから突然誰かが言った。
この声...。