その時だった。ベッドの上の携帯が唸りながら着信音を鳴らした。フラップの小さなデジタルの窓にはミウの名前とメールマークが表示される。


‐わかった。今日はお祭りだしね。たまには外で会おうよ。聖高の近くにある橋に8時。カワイイ浴衣着てまってるね‐

語尾にはピンクのハートがキラキラと光っていた。いったいこの女はどういうつもりなんだろう。
昨日は全然ノリキじゃなかったクセに変なタイミングでハートマークつきのメールをよこす。本当は嬉しいはずなのにユキの顔が頭をちらついて素直に喜べなかった。

しかし、複雑な心境ではありながらも、自然とおれの指は携帯のボタンを押して最も端的にユキへの返信をしていた。

‐了解。‐

パタンとフラップを閉じると、また腹の虫がぐうと鳴いた。