どうしてもっと早く気がつかなかったのだろう。


彼女の名前は冬月雪音。

昔のあだ名は雪女。

その夏に似つかわしくない名前の通り、性格はいたってクール。

親は歯科医師で、家は金持ち。

空手初段。

そして、おれの幼馴染み。おれは、いつもユキと呼んでいる。


彼女の紹介はこんな所だろうか。

いつもとはいっても、ユキと会うのは中学を卒業して以来だった。

久しぶりに会った幼馴染みは、いきなり現れて、特に説明もなくエアコンより少し冷たい声でこういった。

「おはよう。待ってるから早く着替えて」

おれは、いわれるがままにいつもの制服に着替た。外に出ると、ユキは黙ってスタスタとおれの前を歩き始めた。おれも黙ってユキの後ろをついて行いく。

こういう時は大抵、ユキが喋りだすのを待つのが上策だ。ヘタにこっちからちょっかいを出すと、機嫌が悪ければ得意の後ろ回し蹴りが飛んでくる。

ユキの父親が護身術にと習わせたのがきっかけらしいが、護身術にしては少々やりすぎなくらいユキの空手の腕前は凄かった。