「なにやってんだ?」
ふいに口から言葉がこぼれた。


夏休みに入って一週間。おれは、ここ何日かいつもこの場所にいる。誰もいない夏休みの体育館にただ一人。

カーテンは締め切られ、完全無風の体育館はまるで蒸し風呂のようだ。

居心地なんてまるで良くない。

せっかくの高校一年の夏休みなのに、ここには遊ぶ相手もいなけりゃ、話す相手さえいないのだ。

おまけに独り言。


それでもおれがここにくるのは、やはりただの未練なのだろうか。


ごろんと体育館の床に寝そべり、天井を見上げた。こんなに蒸し暑いのに、体育館の床板はひんやりと冷たい。
夏の風が校舎の周りの木の葉を揺らし、サラサラと壁越しに音が聞こえた。


誰もいない体育館がこんなに寂しいものだなんて思ってもみなかった。

ここには、ダムダムとボールをつく音も、バッシュが強くこすれる音も、誰かの騒ぎ声も何もない。

聖域と呼ばれる名門東高の体育館とはえらい違いだ。