ゲームやマンガを差し置き、友達と話題が合わなくなってまで、没頭する価値のあるものだったのか。あのときの自分の感情はよく覚えていない。

覚えているのは、目まぐるしく変化するコートの中を必死で取り残されない様に食らいつく自分の姿と、小学生の小さな手には有り余る、オレンジ色の大きなバスケットボールだけだ。

そうして、毎日コートの中を走り回りながら、中学に上がった頃には、おれは、普通の少年ではなくなっていた。

おれは、いつしか「天才」と呼ばる様になっていたのだ。

「天才シックスマン」桐山秀一。それが、中学のときのおれの姿だ。