「おれも似たようなもんだ」

ミウは突然おれの鼻を右手で強く摘まんだ。


「違うんだな~これが」

おれは訳がわからず目を丸くしていると、おもいっきり鼻にデコピンをくらった。

「って!」

鼻先が瞬時に熱を持ち、おれは思わず身体をくの字に曲げて、手で鼻を押さえた。すると頭上からケラケラと子供のような屈託のない笑い声が聴こえてきた。出会った時、初めて聴いたミウの笑い声。


「私とシュウはちょっと違う」

本当にこの女のオフェンスは読みずらい。おれはまだ赤くなった鼻を押さえながら、不機嫌にいった。

「なにがだよ」


「私は忘れられた。綺麗さっぱりね。強がりじゃないよ。だから、友達の誘いにも快くのって練習試合なんか見に行ったんだから」

楽しくなけゃいけないのか?我ながら最悪にバッドチョイスなセリフだった。


「でもそれが失敗だった。シュウの言葉を聞いた途端、私はもう一度考えなきゃいけなくなったんだ」

記憶にもほとんどないおれの軽い一言が、いったいミウにどんな問題を出題したのだろう。おれ程度の成績で、ユキと同じ名門高校の生徒に出題できる問題なんて、たかがしれている。