「なんでそう思ったんだ?」

ミウはため息に似た一拍を置いていった。

「私はただ誉められたかったんだ。喜んで欲しかった。他の誰でもない。お母さんの笑う顔が見れればそれでよかったの。それだけだった。私がバスケをしていた理由は」


「それでバスケを辞めたのか」


「そう。次の日すぐに退部届けを出した。もうバスケをしても楽しくなくなったから」

シュートをきめるたびに死んだ母親の顔がちらつく。大好きな母親が好きだったスポーツを、自分が痛みを抱えながら続けるのはキツい話だ。

「部活を辞めたら私には何もなくなった。無限に広がる退屈な時間が、ただのろのろと過ぎていく」

それはおれも同じだった。なんの生産性もない、だらだらとした時間の波に乗っかっている内に、気がつくとボロい体育館の真ん中で昼寝をしていたのだ。

「それから、つき合う友達も変わって、部活や勉強よりも、遊ぶことが最優先の子達といる時間が多くなった。たいして面白くなもない話で、キャーキャー騒いだり、学校サボッてカラオケ行ったり。髪を染めたのもその頃かな。」