夏休みといっても、それは生徒だけの話で、いつも数人の教師が職員室にいるのをおれは知っていた(部活も補習もない夏休みの学校に、何故教師が必要なのかはよく分からない)。
職員室のある校舎と体育館とは正反対の場所に位置しており、おれとミウはできるだけ職員室から遠い校舎に忍び込んだ。
たまに学年主任の教師たちが交替で校舎の中を見回りしてたりするのだが、ラッキーなことにおれたちは誰にも見つかることなく屋上まで上がれた。
「綺麗だねぇー!」
ミウが両手を空にかざして叫ぶようにいった。ミウの手の上には、できすぎなくらい見事な虹が、雨上がりの夏空に架かっていた。
「体育館の中以外で話をするのは初めてだな」
ミウはまだ気持ち良さそうに虹を見上げている。今にもあの空の橋を渡ってしまいそうだ。ミウは屋上のフェンスに手を掛けておもむろにいった。
「私に初めてバスケットボールを教えてくれたのは、私のお母さんなの。物心ついた時からバスケットボールが一番のオモチャだった」

