おれはその先の言葉が言えなかった。言えばこの腕の中からミウが消えてしまいそうな気がした。言葉に詰まり、ただしがみつくように抱き締めるおれに、ミウは優しい声でいった。

「ねえ、シュウ。私と初めて会った日のこと覚えてる?」

ケラケラと笑うミウの顔が頭に浮かぶ。第一印象は変な女だった。

「忘れるわけないだろ。まだ1ヶ月もたってないんだぞ」

ミウは両手でおれの胸を押し、優しくおれの腕をほどいてクスリと笑った。上目遣いでおれを見るミウの顔は、どうしようもなく綺麗で、どうしようもなくせつない。

「ホントに覚えてないんだね。私とシュウはもっとずっと前に一度会ってるんだよ」


「えっ?」

おれはとっさに頭の中で記憶のページをめくった。走馬灯のように高速で無数の記憶が駆け巡る。しかし、どのページにもミウの姿は見当たらなかった。