「ねえ、シュウイチ・・・」

ユキは涙をさっと拭いて、前を向いたままいった。

「ミウが死んだっていったら信じる?」

もう何もかもがめちゃくちゃだった。まさか、おれはまだ夢の続きから脱け出せてないんじゃないだろうか。しかし、そこにいるのはまぎれもなく本物のユキで、後頭部にできたタンコブの痛みも、さっきまでミウと1ON1していたこの体育館も、全てがリアルだった。
ただ、ユキの口からでた死という言葉が、どうにも処理できず、おれはとりあえずバカみたいに当たり前な答えを返した。

「信じない」

当たり前だ。当たり前だけどおれは間違っていない。ミウが死んだなら、さっきまでおれと一緒にいたミウはなんなんだ。おれが自問自答しているうちに、衝撃的事実を告げるユキの言葉がやってきた。

「シュウイチ、携帯見せて」
おれはコートの隅に置いていた自分の携帯をとってユキに渡した。

「やっぱり・・・」

「何が?」

ユキは数秒間おれの携帯をチェックした後、パタンとフラップを閉じていった。

「消えてる。シュウイチの携帯からもミウの足跡が無くなってる」