目が覚めると時刻はすっかり昼近くになっていた。

「最悪な夢だったな」

寝起きで頭はぼんやりしているのに、夢で見た映像はワンシーンも欠けることなくはっきりと覚えている。相変わらず家の中は静まりかえり、オフクロはおれの朝食も用意せず仕事に出掛けたようだった。眠い目をこすりながらキッチンへ食糧を探しにいくと、スウェットのポケットの中で、携帯の着信音が鳴った。

「おっはよう!起きてる~?体育館で待ってるからきてネ」

おれがおはようと挨拶を返す前に電話はブチッと切れた。昨日おれをハメたことなんて、いっさい気にしていない明るいミウの声。おまけに夢の中では根性無しと罵られ、おれはムカつきながら冷蔵庫に入っていたバナナをむさぼり食った。確かまだ、トーストが何枚か残っていたはずなのに。昨日、土産を買い忘れたおれへの嫌がらせだろう(あのババァ)。
本当に女って、なんでこんなに勝手で理不尽なんだろう。そう思っているとまた携帯の着信音が鳴った。今度はメールだ。

〉退屈だから早くきてネ〉一時までに間に合わな〉かったらポカリ一本!
〉急げ急げ~