レイアップ



「なんだよ、つまんねぇな。何か言い返せよ」

山里が期待外れのおれの態度に舌打をする。こいつは、大島と違って内申のことなんて考えちゃいない。女にモテることが第一で、バスケの技術よりも、髪型のセットの方が断然上手い。おれをハメて、一番喜んでいるのは多分こいつだろう。
校則ギリギリに染めた茶髪に、NBAのチームロゴが入った派手なリストバンド。実力のないやつに限って形から入るのは、どのスポーツでも一緒だ。おまけに無駄口まで多いのだからたまらない。

「そんなに推薦が大事かよ。こんな玉遊びに、なにマジになってんだ」

山里が乱れた前髪を指先でツマミながらボソッといった。

「アホくさ」

安い挑発だった。いつもなら一言くらい言い返してやってるところだが、生憎おれには、そんな気力は残っていない。ベンチに戻るのもかったるい。そのままコートを出て、着替えて帰ってしまおうか。おれはすっかり冷めきっていた。
汗が乾いて、体から火照りも消えていく。