レイアップ



ニヤツキながら耳打ちしてきた大島の言葉に、不思議と怒りは感じなかった。というよりやっと納得できた気がする。このチームがいつまでも弱小な理由。

おれの横をぞろぞろとメンバーたちが通りすぎる。山里は舌を出してアホズラを浮かべながら、おれをバカにしている。大島のいう通り、もうどうでも良くなってしまった。メンバーの誰一人として勝ちを望んでいないチームが強くなれるはずがない。おれは、そんな当たり前のことを今まで忘れていた。

おれも、大島や山里たちと大して変わらなかったのだ。こんな時だけ本気で勝ちたいと思うなんて、そりゃ都合のいい話。

だが、こんな時でさえ勝ちたいと思わないこいつらとは、やっぱり根本的な価値観が違う。

同じ中学三年、受験や進学のことを考えると、むしろ大島たちの方がノーマルなのかもしれない。

だからこの試合はくれてやる。ここでわめいても奴らの思うツボだ。後はせいぜい内申の点数稼ぎでもしてるがいい。

おれは大島を無視して、ベンチへと足を踏み出した。