レイアップ



言葉が通じなくても怒りくらいは伝わるだろう。
おれが奴の青く光る目を睨み付けると、今まで沈黙していたケイトがようやくその重い口を開いた。

「キミはナニかカンチガイしてイル」

(何がだよ?)おれが聞き返す前にケイトはいった。

「ボクはキミとショウブをシテイルわけではナイ。キミタチのチームとショウブをシテイル」

うちのチームのPG(ポイントガード)が、ディフェンスのプレッシャーに押されてようやくおれにパスを出した。

油断はしていなかった。ただ、ケイトの言葉に少し気をとられていたのかもしれない。敵が1ON1を望んでいると、頭の隅で決めつけていたのかもしれない。
とにかくおれが、そのパスに対して反応が遅れたことは確かだ。

プレッシャーに押されて無理やり出したパスは、スピードもコースもタイミングも、全てが赤点の出来だった。それをケイトは見逃さなかった。いや、むしろ最初からこれを狙っていたのかもしれない。

追いかける気力もなくなる完璧なパスカット。おれはただ呆然と立ち尽くして、ケイトの背中を眺めるしか無かった。