『ねえ、起きてよ』

眠りにの中で声がした。久しぶりに聞くあの少年の声。せっかくのおれの快眠を邪魔して、またあの悪夢へと導くつもりなんだろうか。

「なあ、わるいけど今寝てるんだ。邪魔しないでくれるか」

おれは、とりあえず見飽きた悪夢への誘いを断ってみたけど、眠りの中での主導権は向こうにあるようだった。

少年はニヤリと笑いおれの手を引くと、背中の翼で浮かび上がった。周りは一面真っ暗な闇。まるで、宇宙空間のような上も下もない世界の中で、少年はおれを手にぶら下げたまま飛び回り、闇の隙間から漏れているわずかな光目掛けておれを放り投げた。

『バーカ』

少年の声が遠くから聞こえたけど、おれはただ絶叫し、その光の中に吸い込まれていくだけだった。