夏という季節には不思議な力がある。
加速したり、減速したり、時間の流れがえらく曖昧に感じたり、根拠のない希望や淋しさが、太陽に照らされながら気まぐれに顔をだす。


彼女と出会った夏は、そんな夏だった。





ここは、静かな寂れたびれた体育館。

おれが振り返ると、そこには一人の女がケラケラと笑いながら立っていた。

チェックの短いスカートに真っ白い夏服のシャツ。髪は限りなく金色に近い茶髪で、今では少なくなったルーズソックスの下には黒いナイキのバッシュを履いている。


ちょっとまてよ。

ルーズソックスにバッシュ・・・?

変な女。

制服を見たところ、うちの生徒ではない様だ。

女はまだケラケラ笑っている。

「だれ、あんた?」

おれが声を掛けると、女はふっと、真顔になっていった。


「初対面の女の子に向かってあんたはないでしょ。あんたは」

なんで初対面の女に怒られなきゃいけなんだ。そう思いながら、おれはぽかんと口をあけていた。