退屈だった。



ろくに雨も降らない梅雨があっさりと終わり、季節は早々に夏を迎えいれた。

高校一年の夏休み。それは、この国の多くのガキたちにとって、おおいに待ち遠しい解放の時間だ。

学校という名の足かせからはずれ、制服という名の囚人服を脱ぎ捨て、急に背中に翼がはえたかの様に、奴らは昼間だったり、夜だったりの世界へ飛び出していく。

あわれにも、この国に生まれて良かったと思える唯一の瞬間だ。


そんな、誰もが我を忘れ、狂った様に気温を上げる夏の空を飛び回る中、おれは一人、錆びれたクソ蒸し暑い体育館のセンターサ-クルに立っていた。




退屈だった。




おれの名前は、桐山秀一。バスケは、小学五年のときに叔父が監督をしているミニバスに入ることになり、始めることとなった。そのときから、おれは、朝、昼、夜、一日中休む間もなくコートの中を走り回るはめになった。

友達が好きなゲームや流行りのマンガの話題で盛り上がっている中、何千何万とパスをして、何千何万とシュートを打ち、何千何万とコートの中をいったりきたり。

普通の小学五年生にとってバスケはそんなに少年を夢中にさせるものだったのか。