あるところに、リョウタくんと言う小さな男の子がいた。

リョウタくんは保育園に通っている。

でも、保育園では、お友達を蹴っ飛ばしたり、押したり、物を隠したりしてた。

お家でも、お姉ちゃんの机の上をぐちゃぐちゃにしたり、ママがご飯を作っているときに、勝手に調味料をいれたり、パパの新聞にお絵かきしたり、ビリビリに破ったりと、とにかくいたずらが大好きな男の子だった。

そんなある日、保育園へ行くリョウタくんはママに『行ってきます。』って言った。

でもママは『行ってらっしゃい。』って言ってくれなかった。
いつもは言ってくれたのに...

保育園に着いたとき、先生に『おはよう』って言った。
でも先生は他の子と喋っていて『おはよう、リョウタくん』って言ってくれなかった。
いつもはどんな時でも言ってくれたのに...

友達が鬼ごっこをして遊んでいたから『僕もやるー!』って言ったら、皆は『やーめた!』って言ってどっかに行っちゃった。

お家に帰って『ただいま!』って言ったら誰も返事がなかった。
いつもは『お帰り』って言ってくれたのに...

誰も遊んでくれない、誰もお喋りしてくれない、リョウタくんは悲しくなった。

何日かして、家族とキャンプに行った。
山のキャンプには小さな小川があって、近くに暗いトンネルがあった。

リョウタくんは釣りをしてるお姉ちゃんとパパに『僕もやりたい!』と言った。
でもパパが『リョウタにはまだ難しいから、あっちへ行ってなさい。』と言われた。

料理をしてるママに『僕、お手伝いする!』って言った。
でもママは『危ないからダメ、あっちへ行ってなさい。』と言われた。

誰も遊んでくれない、誰もお喋りしてくれない。

リョウタくんは暗いトンネルへ向かった。

この先には何があるんだろう...

トンネルの向こうに行っても誰も気付かないよね...

『ママ、ごめんなさい...』

リョウタくんは一人、トンネルの中へ消えた...。