今日は生憎の雨。

傘を忘れた私は鞄を頭の上に乗せて
走っていた。
肩に滴り落ちる水が冷たくて
気持ち悪い。

ただでさえ雨なんて嫌いなのに
服までびしょ濡れになるなんて・・・

周りの人間とすれ違う度
好奇の視線が痛い程に刺さる。


そう、私は今正に皆の注目を集める
大スター!

なんて下らない冗談が言える程の
余裕は無い。


私は一刻も早くうちに帰りたかった。


でもこういう時に限って
思わぬ邪魔が入ったりするのは
お約束で

友達とノリで設定した
愉快なゲームの戦闘曲がポッケの中で鳴り響いた。


はぁー こんな時に誰だよ!

そのまま無視を貫こうとしたが
戦闘曲は鳴り止まない。

サビが終わると少ししてから
またサビが鳴る

つまりリピート。



若干イラつきつつ
渋々電話に出た。

「もしもし!?しつこいんだけど?!」

「あっ!ごめん!何してるかなあって思って!」

「雨の中走ってますが!」

「は?なんで?」

「傘忘れたから!」

「まじ?それやーばばばいだね!
じゃあずぶ濡れパティーンか!うける!超ウケるー!」

ピッ

即座に電話を切った。

相手はよくわからないけど
ムカつく男ナオトだった。

やーばばばいとか言ってるお前の
脳みそがやーばばばいだよ。

軽く心の中で毒づきながら
家路を急いだ。