「…お入りなさい」


コンコン、とまるで教本通りの完璧なノックの後、扉の外でぎこちなく立っている私に向けられた声は、思いの外柔らかだった。


「失礼します」

その声に続いて学園長室のドアを開けると、不思議と気分が落ち着いてきた。


「ご機嫌よう、笹木さん」

学園長はそう言って私をソファに導く。


よく見てみると、目尻がエリカそっくりだ。
いつでも笑顔を浮かべているような、そんな印象がある。


部屋を観察してみると…このソファもだが、エリカの部屋に似ている気がする。


細かい調度品やカーテン・絨毯など、二人は良く似た趣味をしているようだ。




──まるでエリカに会っているみたい。



私は既にこの人への警戒心を解いていた。












「…さて、笹木さん。本題なんだけれど…」


学園長が自ら淹れて下さった紅茶を飲みつつ、世間話なんかで和んでいた時、学園長は急に気まずそうに口火を切る。