「…私は、そんな薔薇たちに癒された。
今までずっと、何のために生かされてるのか分からなかった。何一つ自分で出来ないのに、どうして、って」


私はじっとエリカを見つめた。

エリカは慎重に言葉を選び、それでも懸命に私に伝えようとしてくれている。


「私はこの場所を守りたい。それが私の使命のような気がしたの。
…それに、そのおかげであなたにも知り合えたし」


最後にクスッと笑って、踊るような足取りで私の先を歩く。



「エリカ…」


私はそっと彼女の手を掴んでいた。


彼女は変わらず微笑んでいるのに、何故か…今にも消えそうに儚い。


まるで天女が空に帰ってしまうみたいに。





「ね、一つ提案があるの」


「…なに?」


「この薔薇園は、二人だけの秘密よ。
雪融けの薔薇がどれほど美しいか、知っているのは世界で二人だけなの」




世界で、二人しか知らない、秘密。




「それは…良い響きだね」



私も微笑みを返した。