その日は薔薇園に来ていた。


ちぃちゃんに会いたかったから。

傷を癒してくれるのは、彼女だけだと思う。






(はぁ……、私、何してるんだろう)



深くため息を吐いた時、誰かが薔薇園に足を踏み入れる音がした。

ちぃちゃんが着たんだ。








でも、そこには──







「……っ はぁっ…見つけた…っ」

「──っ!!静架……」




静架の黒髪が、なびいた。





「ど……して、此処……」

「──いい加減にしなさいよ!!」


どもる私を無視して、静架が喚いた。

彼女の纏うオーラは、既に手に負えない程怒りたぎっている。



「何日も稽古に来ないなんて!!仮にもあなたは主役なのよっ?!」

「そ…、れは……」

違うの、それは、

それは───、





なんだと言うのだろう。






頭の中に、いくつもの謝罪が浮かんでは消えた。