古今の通ひ字


彼女がタイトルを書いている間、僕は空を眺めていた。
あの日よりも、空の感情が溢れ出しているように見える。


タイトルを書き終え、彼女は僕の方を向いて少し小さな声で訊いた。

「平坂くん、最近調子よくないみたいだったけど、大丈夫?
なんだかいつも上の空というか、物思いに耽っているというか……」

くすっと、僕は思わず小さく綻んだ。まさか好きな人にまで問われるなんて。


不思議そうに僕を見つめる彼女を、真っ直ぐに見つめ返す。

「恋、していたんです」

夕方に出づ、赤。僕の空の、我慢の限界。


「灯さん、僕はあなたが好きです」

溢れ出す赤色の感情は、もう二度と忍ばせられない―――