古今の通ひ字


作品名の欄は空欄だった。書き忘れたのだろうか、と思ったとき
美術室のドアがカタカタと申し訳なさそうに開いた。


「平坂くん?」
「上村さん」

彼女と目が合った。僕の忍ばせた赤を見抜いた真っ直ぐで冷静なその目。

「タイトル、書き忘れちゃった」

安堵を覚えるその声。

「平坂くんも完成したんだね!」

希望を感じるその笑顔。
「……はい。やっと」

やっと、気づいた。僕は彼女が好きだということに。