恋しくて。



〖 朝日 春歌 side 〗


高校1年の春。私に衝撃が走った……

それは聖悠希が八神高校に新任で来たこと。
更に…私のクラスの担任教師になったこと。

こうなっていしまったら、私は告白できない…

”隣の家の兄弟のような幼なじみ”
それが、”担任教師”と”生徒”になったから
先生と生徒が幼なじみということは隠すべきだし
それから…私が恋をしていることも…

この2つがバレたら、
悠希の仕事を奪いかねないんだから。

絶対にバレないようにしなくっちゃね…

学校では、聖先生って呼ぼう。
だって、簡単に悠希先生なんて呼んだら、
もしかしたら…バレたりするかもしれないもん…


「あの…ゆっ…聖先生…。」
「ん。は…っ…朝日さん…何ですか?」
 危ない…悠希って呼ぶところだった…あれ? 悠希も今…
「私…クラス委員にありました。朝日春歌です。
  あ。その…いっ、1年間、宜しくお願いします!」
「朝日春歌さんね。こちらこそ、宜しくな?
  えっと~…このクラスの担任の聖悠希です。」
 わかってるよね…名前なんて…バカみたい。
 それに笑顔で答えてくる悠希に何となく私は、イラッとしている…。
「そ、それだけです…。失礼します。」
「朝日さん、クラス委員はクラスの中心だからな。
  それから…そんなふくれっ面だとせっかくの可愛い顔がもったいないぞ~?」
 はあ~っ?!/// 悠希の馬鹿野郎~!! なっ、何がっ、可愛い顔だ…// …この阿呆が…
「そ、そういうお世辞は結構ですから。聖先生。」
 イラッとしているせいで、八つ当たり…きっと、まだ私はふくれっ面だろうな。
 でも…そうでもしないと私は、顔に恋しいという気持ちが
 出てしまうような気がしたんだ…許してね? 悠希…
 そう心の中で何度も”ごめんね。”って謝りながら、私は足早に職員室を後にした……


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〖 聖 悠希 side 〗


25歳の春。俺にとっての一大事件が起きた。

母校、八神高校の新任教師になったまではよかったといってもいいのだろうか…

だが、まさか…春歌が八神高校に居たとは…
しかも…俺が持つクラスも生徒…どうしてこうなるんだあ~…!!!

あれ…春歌って呼べねぇじゃんか…!

”朝日さん”って呼ぶのか……なんか、辛いな~。

幼なじみってのも、好きなやつってのも
バレたら俺…終わりだな…仕方ないな。隠すしかないよな。

春歌の未来を壊すことだけはしたくないからな。

「あの…ゆっ…聖先生…。」
「ん。は…っ…朝日さん…何ですか?」
 あれ…? 春歌? どうしたんだろう…っ危な…!
 いつもの癖で春歌って呼ぶところだった…
「私…クラス委員にありました。朝日春歌です。
  あ。その…いっ、1年間、宜しくお願いします!」
「朝日春歌さんね。こちらこそ、宜しくな?
  えっと~…このクラスの担任の聖悠希です。」
 ”うん。知ってる。”そうココロの中では思いながらも、先生らしい対応をしてみた。
「そ、それだけです…。失礼します。」
「朝日さん、クラス委員はクラスの中心だからな。
  それから…そんなふくれっ面だと
    せっかくの可愛い顔がもったいないぞ~?」
 でた…(笑) 春歌のふくれっ面~! 俺には、わかる。
 春歌がふくれっ面の時は、隠し事をしようとしているときか拗ねてるときだ。
 長年、近くにいると自然とそんな感じがするんだ…
「そ、そういうお世辞は結構ですから。聖先生。」
 ん…? もしかして…怒ったのかも。何となく返事が冷たいような気がする…
 あ。”ふくれっ面だと可愛いのにもったいない”って言ったことに腹立ててんのか? 
 俺、思ったこと行っただけだぞ。軽く首を傾げ微笑み職員室から去る春歌を
 目で追いかけて、去った後何となくデスクに顔を伏せた…


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