.:*・'仮恋〜甘い声で惑わす君〜.:*・'




恭弥の家がどこなのかは分からないけど、方向を変えて歩いてくってことはたぶん遠回りなんだろな・・。



また、キュと音を立てる。



なんなんだろ、この胸の痛みは・・。



ー****



「・・・今日は、来てないんだ・・」



次の日の朝、靴を履いて外を出るとふとそんなことをつぶやいていた。



何言ってんだろ、朝は一緒に行かないって言ったのあたしなのに・・・。



でも、もしかしてなんて思って少し期待してる自分だっていた。



あたし、どうしちゃったんだろ・・。



また小さくため息をつく。



昨日家に帰ってからなんとなく数学の問題やってみたけど、恭弥に教えてもらったところ全部解けるようになってた。



やっぱり、そう考えるとみんなが好きになるだけあるなってそう考えちゃう。



「おはよー!優実っ」


「あっ、おはよ!」



ぽんっと肩を叩きながら、藍香の明るい声が聞こえた。



それにしても、いつにも増してニコニコしてる藍香。



これは何かあったな・・。



「藍香、今日はとっても嬉しそうだね」



「うん、そうなのっ!昨日ね、彼氏と初デートに行ったんだけどね、ちょー楽しかったの!それでね・・」



うんうん、と頷きながらハイテンションで話す藍香を微笑ましく思う。



入学した時から一目惚れしたってずっとおいかけてたから、あたしも素直に嬉しかった。