.:*・'仮恋〜甘い声で惑わす君〜.:*・'




「んじゃ、優実あたし先帰るね〜」



「うん、バイバイ」



ひらひらと手を振りながら、るんるん気分で教室を出て行った藍香。



いいなぁ、彼氏とデートなんて。



あたしは好きな人すらいないのに。



すこし落ち込みながら、バックを持って図書室に向かう。



ーガラッ



図書室を開けると本の独特の匂いが鼻をかすめる。



誰もいないんだ・・・。



図書室なんて始めて入ったからよくわかんなかったけど、意外と落ち着くかも。



ほっと息をつきながら、椅子に座る。



ちょっとくらい自分で解いてみようかな。



そう思い、バックから数学の教科書とノートを取り出す。



「・・・ダメだ、全問外れた・・」



試しにと思って解いた問題を全問外すというなんとも散々な結果。



こんなんじゃ、絶対80点なんか取れないよ。



はぁ、と大きなため息をつく。



「ふっ、でっかいため息だな」



後ろから聞こえた聞き慣れた声に視線を上げる。