…ドドドドド
大きなエンジン音を立てながら、近づく黒い車。
僕達の横に車を止めると、黒いスモークがかかった助手席側の窓が開く。
その途端、黒い背広を着た男の腕が伸びた。
「ーータイムアップだ」
僕と繋がれた方の女性の手を掴む。
女性は先ほどまでの表情とは一変、憎しみ悲しみが織り混ざったような表情を見せた。
「離して。」
「離しては、またあなたは逃げてゆく。
ならば、逃げぬよう捕まえておくだけだ。」
「………」
黙り込み抵抗の意思を無くした女性を見た男は、顎で誰かに何かを合図する。
その途端、後部座席左側からもう一人の男が現れ、女性を引きずり込もうとする。
まだなんとか繋がれたままの女性の手を、必死に離すまいとした。
