「私、…私、一体何をしようとしていたの…!!」
涙を流す大きな瞳が、目の前の僕を捉える。
ゆっくりと僕は腰をあげ、女性のもとへ歩を進め、右手を差し出した。
「諦めないで。目を背けないで。前を見て。
…逃げないで。
自分の意思を持って、自分の気持ちをしっかり持っ
て、自分の足で立って歩いていったらいい」
女性はゆっくりと僕に微笑んだ。
もう涙は流れていなかった。
少し表情が晴れたように見えた。
女性は僕の右手に手を伸ばす。
女性がまたあちら側に行ってしまわぬように、僕はこちら側にゆっくりと引き寄せ、女性を立たせる。
立ち上がり服に付いた汚れをもう片方の手で払った女性は、まだ僕と繋がれたままの手を優しく見つめた。
ーーすこしドキリとする。
ああ、君は、悲しむ表情よりも、そんな表情の方が似合っているのさ。
僕をこんなにも魅了させるのだから。
