今まで金縛りにかかったようにその場を動かず、まるで翼を持った女性が天に向かって羽ばたいていったかのようなシーンをただ見つめていた。
だが、女性が川へと飛び降りた現実を理解した今、急に足が動き出す。

助けなきゃ…!!!

右手を伸ばす。届け、届け。
一瞬女性を捉えそこねそうになった僕の手は、なんとか女性の細く長い白い腕の先にある手を掴んだ。



「…!!、は、離して!!」



女性は僕に気付いて、体を揺らす。
重力に加えて遠心力がかかり、もう腕の力が限界を迎えようとしていた。

「お願い、じっとしててくれ!!」

…っ、せーの!
心の中で合図をかけた同時に、僕は僅かに残る最後の力を振り絞り、右手に掴む女性の手を引っ張り上げた。