「優!!もう飯できるぞ。机の上、片付けろよ。」

フライパンを揺すり味見をしながら後ろの優に声をかけた。

すぐには言う事を聞かないのはいつもの事だった。

けれど、返事がないのは無いことで


俺は不思議に思いながら後ろを振り返った。



「優!!おーい。」


フライパンから湯気の上がった玉子を皿に移しながら声をかけた。

皿からは湯気と共に玉子とトマトからくる爽やかなすっぱい香りがただよっている。



返事がない・・・。


カウンターの向こう側を覗き込むように

空になったフライパン片手に首を伸ばしてみたけれど優の姿は無かった。



不思議に思いながらフライパンを流しに置いて返事の無い優を少し不審に思って

俺はキョロキョロしながら部屋を覗いていった。



「優!!」



隣の部屋にも優の姿は無かった。


ちょこんといつも座っているテレビの前のその場所が淋しそうだった。



(トイレかな・・・一人ではめったに行かないのにな・・・)


トイレにも優の姿が待っては無かった。



もちろん風呂場も・・・。




俺の焦りを表わすかの様に扉は荒々しく激げしい音をたてて閉まった。




部屋中探したけれど優はどこにも居なかった。




俺の顔から血の気が引いていくのが分かった。


台所のカウンターにはまだ、皿から湯気が立っていた。


「優!!」