中学3年の12月ーー。
「今日は数学難しかったね」
「確かに」
放課後の教室で2人っきりの私達。
いつも放課後はみんながいない教室で、少しお話をするんだ。
「もうすぐ付き合って4ヶ月だね」
「あっという間だったな」
「そうだね」
付き合い出したのが7月5日。
あっという間に過ぎていく日々の中、
裕也は私に一切手を出したことはなかった。それに…
ーーキスもしてこなかった。
正直、私のことが嫌いになったのかな…って思うようになっていた私はこの頃、寝不足がち。
別に手を出してほしいとかじゃないんだよ?…ただ、裕也の愛情表現がよくわかんなかった。
「…ねぇ?」
「ん?」
「…裕也は、、、」
ーーー私のこと好き?
そう聞きたかった。
でも重い女だって思われないかな?
嫌われないかな?…そんなことを考えると言葉が喉に引っかかってしまう。
「…やっ、やっぱなんもない!」
「え?なんだよそれ!?」
クスクスと笑う裕也の顔を見て、
私は不安さに襲われた。
この笑顔は本物?偽物?
「どーした?」
笑うのをやめ、裕也が私の顔を覗きこんでくる。
「え、あっなんもないよ!
ちょっと考え事をしてたの」
無理に笑顔を作った私。
「…」
「…なっなに?」
裕也は無言で私の顔をまじまじと
見てきた。
んー…なんてうなりながら見られるから余計怖かった。
「裕也?」
心配になった私は思いきって尋ねる。
「ど、どうしたの?…」
「…」
そこで裕也は腕を組み目を閉じ、
うつむいた。
「?」
なにか考えてるみたい。
数十秒沈黙が続いた。
じれったくなった私は口を開く。
「ゆっ、ゆう…!?!?」
私の口は裕也の唇で塞がれていた。
…かと思えば
それは一秒も続かなかった。
触れるだけのキス。
それでも私の頭は混乱していた。
私は手で顔を覆った。
だって恥ずかしいんだもん。
それに、、今の私はきっと顔が茹でダコみたいに真っ赤になっているから。
「…手、外して?」
優しい声を出す裕也。
でも私は「イヤだ」と言い放つ。
「なんで?別にいいでしょ?」
いつもの口調と違って祐也の優しい口調にドキッとしてしまう。
「だっダメなもんはダメなのっ…」
「いいじゃん」
「ダメッ」
「いいじゃん」
「ダメッ」
「…あ!そこゴキブリッ」
「えっ!?イヤッどっどこっ!?」
私は慌てて祐也のそばに駆け寄る。
だってゴキブリとか怖いもん。
でもどこにもゴキブリの姿はなかった。
「ゴキ…ブリ………は?」
恐る恐る聞いてみる。
「いないよ?嘘。」
ニヤッと笑う祐也。
…だっ騙されたぁぁぁぁぁぁ!!
私は慌てて顔を覆おうとする。
……でもそんな私の腕は祐也に捕まってしまった。
「ちょっ!! ズルいよ!!」
私は腕をブンブンと振る。
…いや、振ろうとした。
でも祐也にガッチリと握られ、私の努力は実らず。
「ゆっ祐也のバカっ!」
私はうつむきながらそう言った。
「…手はなすから、じっとしてて?
お願いだから。」
祐也のその優しい声に私は負けてしまう
コクンと首を縦に振ると祐也は手をはなしてくれた。
私はそのまま腕を下に下げ、
じっとうつむく。
「こっち向いて?」
「イヤだ」
「…いいから」
「イヤだ」
私は駄々をこねる子供のように
イヤだの一点張り。
「…しょうがないな」
祐也はそういうと私の顎を親指と人差し指でクイッと上に上げる。
…いわゆる顎クイ?
恥ずかしくなった私の顔は自分でもわかるくらいに熱くなっている。
「…ゆうや?」
祐也の目をチラッと見ると目が合ってしまった。
…やらかした。
私はそのまま目を離せなくなってしまった。
祐也は私の目を捉え、じっと見つめる。
その目は、吸い込まれそうなほど綺麗。
「…桜?」
「はっはい!?」
いきなり呼ばれ、戸惑う私。
祐也の吐息が私にかかりドキドキする。
「大好き」
その言葉と共に祐也の唇が私の唇に重なる。
熱くて甘くてとろけそうな、そのキスに私の胸は鳴ってしまう。
ドキドキと大きな音をたてる私の鼓動が祐也に聴こえてないかとハラハラする。
そんなことを思っていると祐也は角度を何度も変え、キスを続ける。
「んっ…んんっ」
その度、角度を変えるときに開く隙間から私は空気を求めた。
私はキスに慣れていない。
だから空気を吸うタイミングわかんないし、息を止めようにも混乱して、できなかった。
「ん…はぁ…」
キスは押しついたり吸い付くようなキスに変わる。
「んっんんんー…」
激しいキスに耐えきれなくなった私は、祐也の胸を押した。
「んっ…ハァハァ」
やっと祐也の唇は離れ、私は呼吸を整える。
「ハァハァ…」
肺活量の問題だよね?これは。
私はやっとの思いで、呼吸を整えた。
「終わった?」
祐也は心配そうに尋ねる。
「うっうん。なんとか」
私はそういうと祐也の方に顔を向ける。
「んっ!?」
…と、同時にまた祐也のキス。
「ちょっ…ゆうっ……やぁ…」
私は祐也の胸板をポカポカと叩く。
それでも祐也はやめない。
…かと思えば口の中に違和感が……
「んんんっ!?」
祐也の舌が入ってくる。
「んんっ…はぁんっ」
自分の声かと疑うほど私の口からは甘い声が漏れた。
祐也の舌が私の口の中で動く。
もうその時には私は祐也のキスに溺れていた。
もっと、もっと…と言わんばかりに私は祐也の背中に手を回し、洋服を握る。
体は正直だ。
「もっ、もう!祐也ひどいよ!」
「お前が悪い!」
帰り道。
私達はさっきのことでお話中。。。
あの後、私は半分気絶状態になり、それに気づいた祐也がやっとキスを終えてくれた。
「それにしても今更なんてズルい!」
一歩前を行く祐也を追いかけるように歩きながら私は言い放つ。
「しょうがねーじゃん
俺はずっっと我慢してたんだぞ!」
「え?我慢?」
「あっ!?……」
祐也は慌てて口を隠す。
「我慢…って?」
「そっ、それは………あぁもうっ!
俺はお前がいいって言うまで手を出さないって決めてたんだよ!!」
「え!?なんで?」
はてなマークが頭に浮かぶ。
「だって、お前のこと大事だし?
お前が傷ついたら…俺、嫌なんだよ」
顔を赤らめ、祐也は続けた。
「でもさ、実は今日、お前の親友に聞いたんだよ。…桜が不安がってるって…」
「親友って優香!?」
「あぁ。俺がキスもしないから
嫌われたんじゃないかって思われてるって聞いたときにさ、あーもうダメだって思ったわけ!!」
「?」
私は首を傾げる。
「…桜のこと、、可愛すぎんだろって
理性吹っ飛びそうになったんだよ///」
祐也は手で顔を覆う。
「…だから、、キス…したんだ」
ボンッ
私は顔を真っ赤にする。
祐也がそんな風に私を大事に思ってくれてたなんて知らなかった…
「ねぇ、祐也?」
「なっなんだよ」
一歩前を行く祐也を呼び止めると祐也は振り向く。
それと同時に私は背伸びをし、祐也に触れるだけのキスをした。
「なっ!!…」
目を見開き、顔を赤らめる祐也。
「おっ、お仕置きだよっ!」
私は立ち尽くす祐也を置いていくかのように早足で歩いた。
照れ隠しのため。。
でも私は立ち止まる。
「…ゆっ祐也が私のこと嫌いになっちゃったかと思ったじゃん」
振り返ることなく私はそう言った。
その時の私の声はかすれていて…
それは、私が泣いてるせい。
これは嬉し泣き。
ギュッ
私は祐也の温かい体温に包まれる。
「…ごめんな。」
祐也はそう言い、
抱きしめる力を強くする。
「祐也のバカっ…グスンッ」
私は、私を抱きしめる祐也の腕をギュッと握る。
「…き」
「ん?」
祐也の小さな声は私の耳には届かない。
「もっもう一回言って!!」
パッ
、、と祐也は私から腕を離す。
かと思えば私の前に立った。
「ゆう…や?」
チュッ
リップ音をたて、
祐也は私にキスをした。
「大好きだよ。今までも…これからも」
「!?……祐也の…ばかぁぁぁぁぁ」
私は再び涙をこぼした。
