悲しみに溺れて


「…や…くら……矢野桜っ」

「はっはいっっ」

「……授業終わったわよ?」


ボーッとしていた私の目の前には目を丸くした優香が立っていた。

「あ、ありがとう。」

ぎこちない笑みを浮かべながら私は
椅子から立ち上がった。

「うん。そんなことより今日、合コンがあるみたいなんだけどいく?」

ふわりとゆるくカールのかかった栗色の髪の毛を耳にかけながら優香は言う。



合コン?そんなの行くわけないじゃん


内心そう思いながら私は
どうしよっかなー なんて呑気な返事を返す。



「もうっ!いっつも桜はそう言うよね
結局はなんか理由でもつけて行かないんでしょ!!」


ヒッ!?

優香の圧力にはかなわない。


「なっ、なによっ優香だって
分かるでしょ。私は行きたくもないのっ
わかってるなら最初っから誘わないでよっ」


でも私の圧力だって負けてない。
精一杯反抗してみせた。


「あんたに、辛い過去があることなんて分かってるわよっ。」

あ…


「だからこそ誘ってんの。このままじゃあんたは高城くん以外の男には目もくれないでしょ!?」


ドクンッーー

まるで思いっきり殴られたかのように胸が痛んだ。


「だから私はーー…あ、ごっごめん。言い過ぎた、泣かないで…」


眉毛を下げて優香は私の顔を覗く。



高城ーー…その名前を聞くと目頭が熱くなってしまう、こんなとこで言われたら
私っ……


泣いちゃうじゃんか



「…でもさっ、それでも裕也以外の男の人なんて無理なんだよっヒクッ
ありえないんだもんっ、裕也じゃなきゃダメなんだよ…」


涙が何粒も頬を通って床に落ちていく。ワックスでコーティングされた床は私の涙をはじいた。



「…ごめん、高城くんの名前出して。
でも桜には幸せになってほしいんだよ、大事は親友なんだもん、一生一人でいて欲しくないよ。」


優香の目は潤んでいて、その目には
情けない私の姿が写っていた。


優香まで泣かすつもりはなかった、
でもこんな私のせいで優香は一粒の涙を流したーー。




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