「バイバイ!」「また明日ね!」。放課後の風景。今日はいつもに増して、足が重い感じがする。原因は幼なじみの二人だ。本来背負う必要のない事まで背負わされている感じの姫美子は疲れていた。




「おーい!神田ー!」




後ろから誰かが姫美子の名前を呼ぶ。振り返ると向こうから小走りに寄ってくる3年D組の担任袴田先生がいた。右手には大きめの茶封筒を持っている。足を止めて待っていた姫美子の元に袴田が茶封筒を差し出す。




「神田!お前、三池の家近くだったろ?アイツにこれを渡し忘れてて。大学の資料。明日までに必要なやつだから、悪いが持っていってくれないか?頼んだぞ。」




「あ、はい。」




姫美子に資料を渡した袴田は、40歳を越え、お腹回りについた贅肉をタプタプと揺らしながら校舎へと戻っていく。




「ヤスくん、東大合格間違いなしなんて凄いなー。同じ幼なじみでもノブとヒデに似なくて本当良かった。久しぶりにヤスくんに勉強教えてもらおうかなー。あと、ノブとヒデの事も相談しよっと。」




足取りが少し軽くなった姫美子は学校を後にした。




【神田姫美子という女】

私立桃山高校3年A組。身長153cm。黒髪のセミロングヘアー。一般的に顔だけ見れば可愛い女の子だが、気が強く、友達からもよく相談されるタイプ。その気の強さのせいか、あまりモテない。女子からの人気は高い。両親と3人暮らしで、この街には姫美子が2歳の時に引っ越してきた。姫美子には幼なじみの男の子が3人いる。