ピンポーン…




インターホンを鳴らす姫美子。中から玄関に向かってくる足音が聞こえる。




「はい?」




家康の声だ。




「あ、ヤスくん!姫美子。」




ドアが開き、家康が少し驚いた顔で出てきた。




「どうしたの?姫美子さん?」





家康は幼なじみでも、人を呼び捨てにはしない。昔からだ。性格がでてる。




「袴田先生から資料預かってきた。」




「ありがとう!わざわざごめんね。」




「ううん、近所だしね。」




封筒を受け取る家康。




「あと、勉強も教えてもらっていい?今日の授業、全く頭に入らなくて。」




「え……?あー…僕は別にいいんだけど…。」




何かに気を遣いながら返事をする家康。家の中を少し振り返る。




「本当?ありがとう!やっぱり、持つべきものは優秀な幼なじみだねー。」




カシャッ…




家康の家に上がり込もうとした姫美子だが、背後から携帯のカメラのシャッター音が聞こえ、振り返る。




「スクープ!姫とヤスの怪しい密会!?お泊まり愛!結婚のご予定は!?」




独特の人を食ったような言い回し。漂う香水の香り。振り返ると、片方の口角をニヤリと上げ、こちらを見ている秀吉がいた。