不都合と好都合

「へー。若く見えるから、年下かと思いました。」
雅夫はお世辞ではなく、本当にそう思ったのだった。
工藤さんは嬉しそうに笑って
「頭の中身が成長してないもんでそう見えるらしいです。」
雅夫はふと、工藤さんは独身かな?と思ったがそれを聞くのは失礼かと思い、めぐみを見て言った。
「いい人がご近所で良かったね。」
めぐみはうなずいて
「引っ越しそうそう友達ができるなんて嬉しいわ。」
と、雅夫の前にケーキと紅茶を置いた。
「これ、工藤さんから戴いたケーキよ。とても美味しいわよ。」
「どうも、ありがとうございます。」
雅夫は三度頭を下げてフォークをケーキに突き刺した。
「男の人にケーキはどうかと思ったんですけど。」
と工藤さんは口にケーキを運ぶ雅夫の様子をうかがいながらおずおず言った。
「この人甘いもの大好きだから大喜びよ。」
めぐみがケーキを口に運んでる雅夫を見ながら言った。
「美味い。このケーキどこで売ってたんですか?」
雅夫は感嘆の声をあげた。
「美味しいでしょ?デパ地下で買ったんですけど、私よく行くんですよ。」
工藤さんは思わず身を乗り出さんばかりにして言った。自分と同じ好みの人がいて嬉しかったのだ。