不都合と好都合

「ただいま」
家に帰ると見慣れない女物の靴が玄関に有るのが目に入った。
「お帰りなさい。」
めぐみが出てきて
「今、お客様が来てるのよ。」
「誰だ?」
雅夫がリビングに入ると
「お邪魔してます。」
と見知らぬ女が頭を下げた。
「前のアパートに住んでる工藤さんよ。」
めぐみが雅夫に紹介すると
「はじめまして。工藤です。」
と、その女が再び頭を下げた。
「はじめまして。」
雅夫も頭を下げて
「今日はどういうご用件で?」
とソファーに座りながら言った。
「工藤さんはただご挨拶にみえたのよ。ケーキをお土産にいただきました。あなたのも有るのよ。」
工藤さんが口を開く前にめぐみが説明した。
「それはどうも。ご丁寧にありがとうございます。」
雅夫は納得して再び頭を下げた。
「昨日、奥様が挨拶にいらした時、私達いいお友達になるんじゃないかと。そういう気がしましたので、図々しく押し掛けて参りました。」
工藤さんは雅夫に説明して
「ごめんなさいね。」
とめぐみに言い添えた。
めぐみは、とんでもないと言うように頭と手の平をぶんぶんと横に振って、
「私達、同じ年代なのよ。工藤さんは一つ年上なの。」