ひろ子は一旦家に戻ると、鏡台の引き出しからサングラスを取りだし、かけてみた。大きなサングラスなので、顔が半分くらい隠れる。ひろ子は鏡の中の大きなサングラスをかけた女に、すごく目立つという印象を持ち、つばの広い帽子を探す事にした。
クローゼットをごそごそやって、つばの一番広い帽子を取りだし、埃を祓って被ってみた。
ものすごく怪しげな女が鏡に写っている。でも顔を隠したい時に帽子のつばを引っ張れば顔を隠せそうだった。試しに顔を隠してみる。帽子のつばに遮られ、鏡が見れない。でも確実に隠せるとひろ子は思った。
携帯電話とメモと鉛筆をウエストポーチに入れてウエストポーチを腰に巻くと、ますます変な女まっしぐらという感じだったが、ひろ子はかえってやる気が出てきた。
「行くぞー!おー!」
一人で気合いを入れて、外へ飛び出した。

「目指すは、赤羽清子さんの家だ。」
ひろ子は自分がどこへ行こうとしているのか、自分に言い聞かせた。そうしないと、勇気が出なかったのだ。そんならそこまでする必要ないじゃんと思うが、その反面、わくわくしていたのだった。