「…でさー、私もどうかと思ってさー…」
工藤ひろ子はクッキーをむしゃむしゃやりながら、橋川家のリビングでくっちゃべっていた。
「…でも、それ本当なの?」
橋川めぐみは、紅茶を入れながらひろ子の話しを聞いていた。
「だって私、見たんだもん」
半信半疑の様子のめぐみの態度に、ひろ子はつばも飛ばさんばかりの勢いで言った。
「ひろ子さんが見たのは、でもただ一緒に居た所だけでしょ?それだけじゃ、そこまで言えないんじゃないの?」
めぐみは、慎重に言葉を選んで言った。
「でも元々そういう噂が有ったんだから、やっぱりと思うじゃん。」
ひろ子は唇を尖らせた。
「思うだろうけど、それだけじゃ噂を立証できないよ。」
めぐみは、優しく諭すように言った。
「分かったよ。めぐみさんの言う通り、これじゃ証拠にはならないね。」
ひろ子は立ち上がった。
「証拠になるような物が無いかどうか、行って来るよ。」
「ひろ子さん、そこまでしなくても…」
めぐみは、慌てて立ち上がった。
「人には人の生活が有るんだから、放っといたら?」
「放っとくのは簡単だけど、気になるんだよねー」