不都合と好都合

入社した当時、雪は総務でいろんな社内のイベント企画や取りまとめを先輩と一緒にやっていて各課によく顔を出していた。
そして、橋川雅夫率いる同期の会の人々と出会い、二年下だったにもかかわらず雪も良く入れてもらったりしていたのだった。
｢橋川さん、いつも彼女を置いてきぼりにして飲み会ばかりしていて大丈夫？振られちゃうよ。｣
ある日、雪は橋川に冗談めかしてそう言ったのだった。
｢あいつは大丈夫。もうすぐ結婚するし。｣
橋川がさらっと言ったその言葉に雪は頭を殴られたようなショックを感じた。
雪は橋川に好意を感じていたのだった。
-でも結婚って？
雪は気を取り直して平静を装って聞いた。
｢結婚って、彼女が他の人と？｣
｢馬鹿言うな！俺とだよ。｣
｢え？橋川、結婚すんの？｣
木崎が横から大声を出した。
｢え？本当？おめでとう！｣
周りから一斉に祝いの声があがった。
橋川は照れた笑顔を周りに見せている。
雪は一人、茫然としていた。

その日の飲み会も終わり、皆も帰り支度を始めて、雪は最後の勇気を振り絞り、橋川の耳に囁きかけた。