西田雪の携帯電話が鳴った。
「もしもし…」
「西田!勝手な事ばっかりするな!」
橋川雅夫の怒鳴り声が響く。
「なんで怒ってるの?」
雪は落ち着いて言った。
「皆でお祝いしてあげるって言っただけじゃん。奥さんにも迷惑かけたら悪いと思って電話したら大歓迎だってよ。」
「そりゃ、社交辞令に決まってんだろ!あいつは俺と一緒で内心怒ってるよ。」
「どうかしら?」
雪は鼻で笑った。
「いい加減その、俺様な性格治したら?奥さんだって内心嫌がってると思うよ。」
「大きなお世話だ。とにかく!お前の指図には乗らないからな!お祝いなんか中止だ。誘った皆に言っとけよ!」
「分かった。言っとくわよ。」
西田雪は電話を切ってバックから煙草とライターを出した。苛立ちを癒すように煙草に火を点けて深く吸い込み、ゆっくり吐く。オフィスでは禁煙なのだが今、雪は一人だった。残業をしていると言うより家に帰りたくなくてぐずぐずしてるという感じだった。
「もっと素直になれたらなー。」
雪は独り言を言った。
頭では昔の事を思い出していた。